日本の住宅寿命が短いというのは、悪い方の均衡が前提とするストーリーに過ぎない。今となっては何の根拠もない。高度成長期つまり都市成長の時代には、建物抜きの土地の資産価値が何の努力もなしに上昇していたため、<管理レベル低×調べない・買わない>が社会としても最適な組み合わせだったかもしれない。
しかし、人口減少、少子高齢化などの環境変化を受けて、最適な均衡は表の右下のような状態に移った。しかし、過去に形成された『思い込み』を修正するのはそれほどたやすいことではない。思い込みにぶら下がる形で居住スタイル、商習慣が形成されているため、一方的な戦略の変更は損失をもたらす可能性が高いからだ。しかし、このままでは時代遅れの慣習にしばられて誰も得することのない状況が続く。
国交省がこれまで公表してきた資料によれば、木造住宅の寿命は27年ないしは30年、マンション(RC/鉄筋コンクリート造)は37年としているケースが多い。ところがこうした数字は、取り壊された建物の築年数であったり、建物の新築数を取り壊し数で除した数字であったりして、実態を反映した正確な数字ではない。
木造住宅の「寿命27年」の根拠とは、実は「取り壊した住宅の平均築年数」。現実には、築40年・50年経過してもまだ取り壊されていない十分に使用できる建物も多く、これが一般的な建物の寿命を表しているとは全く言えない。
次に「寿命30年」の根拠。これは「ストック(現存する住宅数)数をフロー数(新築数)で割ったもの」で「サイクル年数」という概念を使い、便宜的に求めたもの。したがってこれも木造住宅の寿命を正確に表しているわけではない。
マンションの「寿命37年」の根拠はやはり「建て替えをしたマンションの平均築年数」。もちろん、築年数がもっと経過したマンションはたくさんあり、これもやはり寿命を表したものとは言えない。
実際はどのくらいか
住宅の寿命については多くの研究がある。某大学の@@教授らが行った「建物の平均寿命推計」の最新調査(2011年)によれば、人間の平均寿命を推計するのと同様の手法を建物で採用した場合、木造住宅の平均寿命は64年としている。