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とどこの海中秘書室
20071213(木) 22:51

クリスマススト-リ-ズ 10

コメント×25
 
「天使のたまご」

「天使がたまごなんて産むわけないじゃん」
ショ-ケ-スをのぞきながら卓矢がちゃかした。
「でも産んだらこんな感じなんでしょ。きっと」美雨が笑った。
ゴ-ルドのたまごに、ゴ-ルドの羽根。
「ちょっと見せてもらっていいですか?」
店員に声を掛けてゴ-ルドのたまごを見せてもらった。
「なにか生まれそうだよな」
「おもしろい形しているね」
「じゃあこれにするかい?」
「ずいぶん前から天使のたまごはあるけどね。
こうしてじっくり見ると深いな。」
サラサラのロングヘアから美雨の好奇心いっぱいの瞳が輝く。
「買えるの?」
「大丈夫だよ。これぐらい。クリスマスプレゼントだよ。」
「やったあ~」
天使のたまご。割れたらなにがあるのだろう・・・
街はにぎやかにジングルベルがどこからともなく聞える。
「可哀想だけど、俺はまた仕事に戻るから」
卓矢は美雨のほどけかけたマフラ-を巻きなおした。
そして彼女の手をぎゅっと握った。
「クライアントがせかすから明日までかかりそうだなぁ」
「しかたがないよ。仕事じゃ。時間さいてもらってごめんね。」
卓矢は別れぎわに美雨の耳元で
「好きだよ」そうささやいて、横断歩道を渡っていく。
夜の雑踏の中で美雨は心臓がはちきれそうになった。
手をぎこちなく振って卓矢をしばらく見ていた。
ひとりぼっちのクリスマス。みんな幸せそう・・・
いちばん空いていそうなファミレスで美雨は夕食を食べていた。
クリスマスにしては地味なハンバ-グ定食。
まあいいや。コ-ヒ-飲みつつ、きれいに包まれた
紙をそっとはがしてみる。
箱を開くと卓矢がさっき買ってくれた
天使のたまごのネックレス。
きらきら光る細いラインが外を走る車のライトに
反射しているような輝きをみせた。
にやけてしまう。あ~だめだ。
そっと手のひらにのせてあたためてみる・・・
夜遅く美雨の携帯が鳴った。
ベットから這い出してボタンを押す。
「はいっ」
「あ・・ごめん。寝ていた?」
「あ・・寝てた」
「じゃ明日にするよ」
「切らなくていいよ。仕事終わったの?」
「意外と早く終わった。やっとね-」
安堵感たっぷりの声がする。
「今日はごめんね。なんかちょっと心残りだったんだ」
「いいよ。お正月もすぐ来ることだし。」
「卓矢。天使のたまご見ていてさ。何が生まれるんだろうねって
言っていたよね。」
「うん・・それが?」
「いやいいよ。やっぱり。」
「そこまで言ってやめるの。へんな美雨。」
「じゃ卓矢は何が生まれると思うの?」
「未来かな」美雨はあっ・・と声をあげる。
卓矢の言葉があまりに図星だったので
なにも言えなくなってしまった。
「どうしたのさ」
「いえ・・同じこと考えていたから」
「なあんだ」
やわらかい笑い声がよどみなく美雨の耳をくすぐった。
                        
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