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とどこの海中秘書室
2012228(火) 11:06

カーネーションスピンオフ~想い人に~

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周防の妻の遺影が、質素に飾られている。

葬儀の客もそんなに多くはなかった。

祭壇の前には、年こそは、重ねたものの、

なんら変わりないすっとした、背格好の周防が

妻の遺影を時折みつめては、来客に挨拶をしていた。

周防の娘もその子供と台所を行ったり来たり忙しい。

隣の部屋では、周防の息子が、同級生らしき知人と

話していた。

「ご愁傷様やったな・・」

そう挨拶したのは、白髪にすっかりなった

繊維組合長の三浦だった。

「・・どうもありがとぉございます。」

その後ろに、バツが悪そうに北村がいた。

何を話していいか、分からないという顔つきだったが

三浦にさとられ

「大変やったな・・」いつもの北村とは違い

蚊の鳴くような声で、かすかに聞こえるだけだった。

周防は、軽く挨拶をして北村を見た。

「きれいか顔やったです・・」

「苦しみもなかったばい・・」

三浦は「そうか・・」
ひとことふたこと、妻の事を三浦は、たずねていた。

後ろで、下を向いたままの北村は、ただ黙ったままで。周防の妻の遺影を最後まで、ちゃんと見ようとは、しなかった。

最後まで、知らんやったとか・・

心の中は、オイは、君を裏切っとったやと。

でもそれでは、いかんばい・・・

そいから、糸子さんを心にしもうた。

無心になって、子供たちば、育とった。

オイも・・・。


なんちゃかんちゃ・・

解き放たれた・・・


そがんことないばい・・


解き放たれた・・そがんことないばい・・


なんちゃかんちゃ~(すべて)の意味。
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