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庭十勝blog | 庭づくりの日々|十勝・帯広
2015108(木) 18:33

雨休日 2015.10.08

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本日は現場完全休日となってしまいました。

明日。明後日とブログはお休みする予定です。






知里幸恵 「アイヌ神謡集」岩波文庫より


その昔この広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました。
天真爛漫な稚児の様に、美しい大自然に抱擁されてのんびりと楽しく生活していた彼等は、真に自然の寵児、なんという幸福な人たちであったでしょう。

冬の陸には林野をおおう深雪を蹴って、天地を凍らす寒気を物ともせず山又山をふみ越えて熊を狩り、夏の海には涼風泳ぐみどりの波、白い?の歌を友に木の葉の様な小舟を浮かべてひねもす魚を漁り、花咲く春は軟らかな陽の光を浴びて、永久に囀る小鳥と共に歌い暮らして蕗(ふき)とり蓬(よもぎ)摘み、紅葉の秋は野分に稲揃うすすきをわけて、宵まで鮭とる篝(かがり)も消え、谷間に友呼ぶ鹿の音を外に、円(まど)かな月に夢を結び、嗚呼なんという楽しい生活でしょう。

平和の境、それも今は昔、夢は破れて幾十年、この地は急速な変転をなし、山野は村に、村は町に次第々々に開けてゆく。

太古ながらの自然の姿も何時の間にか影薄れて、野辺に山辺に嬉々として暮らしていた多くの民の行方も亦いずこ。僅かに残る私たちの同族は、進みゆく世のさまにただ驚きの眼をみはるばかり、しかもその眼からは一挙一動宗教的感念に支配されていた昔の人の美しい魂の輝きは失われて、不安に充ち不平に燃え、鈍りくらんで行手も見わかず、よその御慈悲にすがらねばならぬ。

あさましい姿、おお亡びゆくもの・・・・・・それは今の私たちの名、なんという悲しい名前を私たちは持っているのでしょう。

時は絶えず流れる、世は限りなく進展してゆく。激しい競争場裡に敗残の醜をさらしている今の私たちの中からも、いつかは、二人三人でも強いものが出て来たら、進みゆく世と歩を並べる日も、やがては来ましょう。

それはほんとうに私たちの切なる望み、明暮祈っている事で御座います。

けれど・・・・・・愛する私たちの先祖が起伏す日頃互いに意を通じる為に用いた多くの言語、言い古し、残し伝えた多くの美しい言葉、それらのものもみんな果敢なく、亡びゆく弱きものと共に消失せてしまうのでしょうか。おおそれはあまりにいたましい名残惜しい事で御座います。

アイヌに生れアイヌ語の中に生いたった私は、雨の宵、雪の夜、暇ある毎に打集って私たちの先祖が語り興じたいろいろな物語の中極く小さな話の一つ二つを拙い筆に書連ねました。

私たちを知って下さる多くの方に読んでいただくこと事が出来ますならば、私は、私たちの同族先祖と共にほんとうに無限の喜び、無上の幸福に存じます。



アイヌ神謡集 (岩波文庫)外部リンク














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