2008年11月15日(土)
ギフトシーズン3 「赤いリング」

香夏子さんの表情が、どこか余裕のまなざしで
僕を見ていた。
たおやかな仕草で、アイスティーを飲みほす。
こんな香夏子さんの顔が一番好き。
テーブルの下で私は、逸郎の手を絡めるように
握っていた。テーブルクロスに隠されて、
なにも見えない。そして、ジーンズの太股に触れ
ゆっくりなぞってみた。
くすっと笑い、逸郎の躊躇した顔を見ていた。
すると逸郎がたまりかねたように私の耳元で
「香夏子さん、だめだ」
「なにが・・?」
握っていた手に、さらに逸郎が力をこめた。
「ばかね・・痛いわ」
僕は留学のために短期の英会話の勉強をしていた。
大学とは違い、さまざまな年齢層のクラスだったから
よほどでない限り、親しくすることはなかった。
たまたま隣の席にいたのが香夏子さんだった。
なぜかポツポツ話しかけてくる彼女に好感があった。
「アメリカ留学ね。まだまだ選択肢が、若いからあるわよ」
「私は仕事で、向こうのクライアントと渡り歩かなきゃ
ならないから、強制的ね・・」
その雰囲気に魅かれた。
僕が香夏子さんと密接な関係になる時間はあっというまに
訪れた。
「好きよ。逸郎。」
「こんなに好きになっちゃってどうしよう・・」
逢うごとにそんなことを言っていた。
女性が初めてだったわけではない。
けど・・恋するというよりは完全に恋に落とされた。
こんなことあるんだ。真夏の日差しは誘惑する。
それしか見えない夏。
でも楽しかった。
でもそれは突然終わった。
それは英会話のクラスがラストに迫った頃。
「主人が、アメリカから帰国するの・・」
「どうして・・」
そう香夏子さんは結婚していた。
問い詰めたが「言えなかったの」そう繰り返す。
それきり連絡がなかった。
10も差のあるんだ・・それがなんだ・・。
それから10年が過ぎた。
僕は30歳になった。
今は外国人相手のバーを経営している。
40歳の香夏子が、その指輪を見つめている。
白黒の猫が様子をうかがう。
「不思議な石ですね。ルビー?ですか?」
その指輪には、赤い石がついていたが、少しルビーとは
輝きが違っている。
「僕にもわからないんですが、運命のリングと言われていますよ。その時がきたら赤い糸が見えるらしいです。」
「クリスマスにでもしようかしら」
香夏子をそのリングを買った。
また今年もひとりかしら。
私は離婚した。長いこと気持ちがもう離れてしまって
彼がアメリカを行ったりきたりに疲れた。
それが私と彼をへだてててしまったのかも・・今は思う。
クリスマスの街は賑やかだった。
逸郎は結婚したかな。
私も恋に落ちていた。
でも若すぎた・・彼がせつなかった。
あんなにキラキラしているのに・・。
(あいたいな・・)
ああ言うしかなかった。
指輪を見て見ると、その指輪が夜の街に雑踏に
まぎれて、糸のようなものが見えた。
そんなことあの店主言っていたわ・・そんなこと
「まさか赤い糸なの?」
香夏子にしか見えていないらしかった。
その糸を追いかける。その糸は「ペーパームーン」という
バーにつながっていた。
気になりながら香夏子はためらう。
思い切って開けてみた。
そのカウンターには黒い指輪をした男がいた。
その指輪から赤い糸がのびている。
二人にしか見えていない。
男が香夏子の顔を見ると驚いたように
「香夏子さん・・」
逸郎はそれだけ言うのがいっぱいだった。
香夏子の瞳は笑っていた。
僕を見ていた。
たおやかな仕草で、アイスティーを飲みほす。
こんな香夏子さんの顔が一番好き。
テーブルの下で私は、逸郎の手を絡めるように
握っていた。テーブルクロスに隠されて、
なにも見えない。そして、ジーンズの太股に触れ
ゆっくりなぞってみた。
くすっと笑い、逸郎の躊躇した顔を見ていた。
すると逸郎がたまりかねたように私の耳元で
「香夏子さん、だめだ」
「なにが・・?」
握っていた手に、さらに逸郎が力をこめた。
「ばかね・・痛いわ」
僕は留学のために短期の英会話の勉強をしていた。
大学とは違い、さまざまな年齢層のクラスだったから
よほどでない限り、親しくすることはなかった。
たまたま隣の席にいたのが香夏子さんだった。
なぜかポツポツ話しかけてくる彼女に好感があった。
「アメリカ留学ね。まだまだ選択肢が、若いからあるわよ」
「私は仕事で、向こうのクライアントと渡り歩かなきゃ
ならないから、強制的ね・・」
その雰囲気に魅かれた。
僕が香夏子さんと密接な関係になる時間はあっというまに
訪れた。
「好きよ。逸郎。」
「こんなに好きになっちゃってどうしよう・・」
逢うごとにそんなことを言っていた。
女性が初めてだったわけではない。
けど・・恋するというよりは完全に恋に落とされた。
こんなことあるんだ。真夏の日差しは誘惑する。
それしか見えない夏。
でも楽しかった。
でもそれは突然終わった。
それは英会話のクラスがラストに迫った頃。
「主人が、アメリカから帰国するの・・」
「どうして・・」
そう香夏子さんは結婚していた。
問い詰めたが「言えなかったの」そう繰り返す。
それきり連絡がなかった。
10も差のあるんだ・・それがなんだ・・。
それから10年が過ぎた。
僕は30歳になった。
今は外国人相手のバーを経営している。
40歳の香夏子が、その指輪を見つめている。
白黒の猫が様子をうかがう。
「不思議な石ですね。ルビー?ですか?」
その指輪には、赤い石がついていたが、少しルビーとは
輝きが違っている。
「僕にもわからないんですが、運命のリングと言われていますよ。その時がきたら赤い糸が見えるらしいです。」
「クリスマスにでもしようかしら」
香夏子をそのリングを買った。
また今年もひとりかしら。
私は離婚した。長いこと気持ちがもう離れてしまって
彼がアメリカを行ったりきたりに疲れた。
それが私と彼をへだてててしまったのかも・・今は思う。
クリスマスの街は賑やかだった。
逸郎は結婚したかな。
私も恋に落ちていた。
でも若すぎた・・彼がせつなかった。
あんなにキラキラしているのに・・。
(あいたいな・・)
ああ言うしかなかった。
指輪を見て見ると、その指輪が夜の街に雑踏に
まぎれて、糸のようなものが見えた。
そんなことあの店主言っていたわ・・そんなこと
「まさか赤い糸なの?」
香夏子にしか見えていないらしかった。
その糸を追いかける。その糸は「ペーパームーン」という
バーにつながっていた。
気になりながら香夏子はためらう。
思い切って開けてみた。
そのカウンターには黒い指輪をした男がいた。
その指輪から赤い糸がのびている。
二人にしか見えていない。
男が香夏子の顔を見ると驚いたように
「香夏子さん・・」
逸郎はそれだけ言うのがいっぱいだった。
香夏子の瞳は笑っていた。
2008年11月13日(木)
ヒロ福地さんと福山マシャの相違点
2008年11月11日(火)
鷺沢萠と吉田秋生

ダ・ヴィンチ12月号に呉智英さんのコラムに
盗作スキャンダルのことが書かれていました。
その中に、作家の鷺沢萠さんが、文学界新人賞を受賞した
作品「川べりの道」が、漫画家吉田秋生さんの
「河よりも長くゆるやかに」という作品と
酷使しているという噂について書かれていて、
その話を聞いた吉田秋生さんは
「あら、新人小説家に影響を与えるなんて、嬉しいわね」
という対応だったそうです。
その後、吉田秋生さんの「ラヴァーズ・キス」という
作品には彼女にエールを送ります。
登場人物の一人の少年を「鷺沢」という名前で
登場させて。
なんか吉田さんかっこいい~と思いました。
残念ながら・・・
その鷺沢萠さんは2004年に35歳で自らの命を絶ちましたが。
帯広では公開ないみたいですが
吉田さんの「桜の園」が折しも映画公開。
原作とは少し違うみたいですが。
「桜の園」は女子高の物語。
「河よりも長くゆるやかに」は男子高の物語。
「ラヴァーズ・キス」はすこし前の高校生の物語。
三冊とも大好きな漫画です~。
盗作スキャンダルのことが書かれていました。
その中に、作家の鷺沢萠さんが、文学界新人賞を受賞した
作品「川べりの道」が、漫画家吉田秋生さんの
「河よりも長くゆるやかに」という作品と
酷使しているという噂について書かれていて、
その話を聞いた吉田秋生さんは
「あら、新人小説家に影響を与えるなんて、嬉しいわね」
という対応だったそうです。
その後、吉田秋生さんの「ラヴァーズ・キス」という
作品には彼女にエールを送ります。
登場人物の一人の少年を「鷺沢」という名前で
登場させて。
なんか吉田さんかっこいい~と思いました。
残念ながら・・・
その鷺沢萠さんは2004年に35歳で自らの命を絶ちましたが。
帯広では公開ないみたいですが
吉田さんの「桜の園」が折しも映画公開。
原作とは少し違うみたいですが。
「桜の園」は女子高の物語。
「河よりも長くゆるやかに」は男子高の物語。
「ラヴァーズ・キス」はすこし前の高校生の物語。
三冊とも大好きな漫画です~。
2008年11月10日(月)
ギフトシーズン2「瑠璃色の小箱」

風香が、この街に住み始めてからかなり近所のことも
熟知しているつもりだった。
裏路地の昼間でも薄暗い通りに、その店はあった。
まるで、隠れ家。
「時空屋」
木でできたその看板はいまにも崩れそうなたたずまい。
ずいぶん前からあったのか・・・。
ガラスの戸を引いてみた。
カウベルの鈴に似た呼び鈴が鳴り響く。
そこには古い骨董がところせましと並んでいた。
「あの・・・」
風香は小さい声で、言ってみた。
薄暗い店から白と黒の影が横切る。
「きゃ・・」
猫だ。風香を見て、威嚇しているようだった。
「ああ。すみませんね」
そう言って出てきたのは、背の高い、こんな店には
まるでそぐわないような綺麗な顔だちの店主だった。
35歳ぐらいの男性。
「ここは何を売られているんですか?」
「骨董ですよ。いろいろ集まってしまってね。
なんか店までこんな・・。ああ。
興味あるお客様しか見えません。」
風香の前で鳴いていた猫は、ひょいと彼の手にのっかる。
ひとなですると風香を見て笑った。
とびきり優しい顔をしていた。
見とれていると彼が切り出す。
「で。何をお探しかな」
風香は店内をぐるっと見渡すと
瑠璃色のガラスでできた小箱が目にとまった。
風香は手にとって、蓋をあけてみた。
「僕も受け売りで、聞いた話だけど。
それ願い箱って言って、願いが叶うときは
その瑠璃色が、きれいなムラサキに見えるそうです。
その色のときに何か起きるって・・」
「もう一度やりなおせないか」
「やり直せるの?私たち?」
それ以上言葉が続かない。
私が、彼より3つ歳上だということに執着していた。
なぜなんだろう。
なんでそんなことに気に取られていたんだろうと
今は思う。あとで気がついたのは、やっぱり好きだった。
そして彼は数年後、テレビの人になっていた。
劇団で、お芝居をしている話は聞いていた。
だけど誰がこんなに売れるなんて思っていただろう。
決して二枚目ではないけど、ひょうひょうとした
癒される演技は評判になった。
夜にたまに彼がテレビでドラマをしていると
演技ではあるけれど
きっとちゃかしたり、笑わせたりするのは
変わっていないだろう・・たぶん。
そんな彼を(テレビなのに~)
涙がでる。
私は未だ縛られている・・・。
けりつけなきゃ。いつもそう思う。
半年が過ぎ小箱のことなんて忘れていた。
ある朝みるとムラサキに変わっていた。
「うそ~。」
あのイケメンの店主の言葉を思いだす。
「願いが叶うときは、ムラサキにかわりますよ」
いつものように改札を抜ける。
12月の風はかなり冷たかった。
ホームで電車を待っていると、反対ホームに
彼がいた。
(え~。)だった。
なんとなく視線が合い彼も私にきづく。
お互い「あっ」と口を開いていた。
向かいに電車がはいり、彼が見えなくなった。
電車が動きだすと、彼の姿がない・・
(行っちゃったの・・・)幻・・・?
振り返ったとき息をきらした彼が
そこにいた。
「大丈夫?」
「むこうから走ってきた・・。はああ・・」
そして私は訳のわからない涙を流していた。
まわりの人が変な顔して見て行く。
「おいおい」
「あいかわらず、すぐ泣くんだなあ・・」
その声を聞いて余計に号泣した。
熟知しているつもりだった。
裏路地の昼間でも薄暗い通りに、その店はあった。
まるで、隠れ家。
「時空屋」
木でできたその看板はいまにも崩れそうなたたずまい。
ずいぶん前からあったのか・・・。
ガラスの戸を引いてみた。
カウベルの鈴に似た呼び鈴が鳴り響く。
そこには古い骨董がところせましと並んでいた。
「あの・・・」
風香は小さい声で、言ってみた。
薄暗い店から白と黒の影が横切る。
「きゃ・・」
猫だ。風香を見て、威嚇しているようだった。
「ああ。すみませんね」
そう言って出てきたのは、背の高い、こんな店には
まるでそぐわないような綺麗な顔だちの店主だった。
35歳ぐらいの男性。
「ここは何を売られているんですか?」
「骨董ですよ。いろいろ集まってしまってね。
なんか店までこんな・・。ああ。
興味あるお客様しか見えません。」
風香の前で鳴いていた猫は、ひょいと彼の手にのっかる。
ひとなですると風香を見て笑った。
とびきり優しい顔をしていた。
見とれていると彼が切り出す。
「で。何をお探しかな」
風香は店内をぐるっと見渡すと
瑠璃色のガラスでできた小箱が目にとまった。
風香は手にとって、蓋をあけてみた。
「僕も受け売りで、聞いた話だけど。
それ願い箱って言って、願いが叶うときは
その瑠璃色が、きれいなムラサキに見えるそうです。
その色のときに何か起きるって・・」
「もう一度やりなおせないか」
「やり直せるの?私たち?」
それ以上言葉が続かない。
私が、彼より3つ歳上だということに執着していた。
なぜなんだろう。
なんでそんなことに気に取られていたんだろうと
今は思う。あとで気がついたのは、やっぱり好きだった。
そして彼は数年後、テレビの人になっていた。
劇団で、お芝居をしている話は聞いていた。
だけど誰がこんなに売れるなんて思っていただろう。
決して二枚目ではないけど、ひょうひょうとした
癒される演技は評判になった。
夜にたまに彼がテレビでドラマをしていると
演技ではあるけれど
きっとちゃかしたり、笑わせたりするのは
変わっていないだろう・・たぶん。
そんな彼を(テレビなのに~)
涙がでる。
私は未だ縛られている・・・。
けりつけなきゃ。いつもそう思う。
半年が過ぎ小箱のことなんて忘れていた。
ある朝みるとムラサキに変わっていた。
「うそ~。」
あのイケメンの店主の言葉を思いだす。
「願いが叶うときは、ムラサキにかわりますよ」
いつものように改札を抜ける。
12月の風はかなり冷たかった。
ホームで電車を待っていると、反対ホームに
彼がいた。
(え~。)だった。
なんとなく視線が合い彼も私にきづく。
お互い「あっ」と口を開いていた。
向かいに電車がはいり、彼が見えなくなった。
電車が動きだすと、彼の姿がない・・
(行っちゃったの・・・)幻・・・?
振り返ったとき息をきらした彼が
そこにいた。
「大丈夫?」
「むこうから走ってきた・・。はああ・・」
そして私は訳のわからない涙を流していた。
まわりの人が変な顔して見て行く。
「おいおい」
「あいかわらず、すぐ泣くんだなあ・・」
その声を聞いて余計に号泣した。
2008年11月10日(月)
ギフトシーズン1 「エピソードZERO」

「みんなによろしくね。」
美羽はカバンに衣類をつめながら
僕の話なんか、聞き流しているようだった。
「うん。わかった・・」
ニャオ・・足元に白黒の猫タマがすり寄る。
彼女はタマを抱き上げ顔にスリスリした。
「タマ~しばしの別れじゃ・・」
「あなたも大変だけど、がんばってね・・」
「はいはい。」
「あれ忘れていたわ・・」
そう言うと、彼女は店に電灯を付けた。
昼間でも暗いのに、夜は闇だ。
まるで大学の研究室のような、狭い空間に棚がいっぱい
あって、ヘンテコリンな物が沢山あった。
「すらすらドロップは何処だったかしら・・」
「えっと・・」僕も店に出て一緒にさがした。
ぐるっと見渡す。
「あれだ・・随分上だ。待って・・」
そういうと、僕は奥から踏み台をもってきた。
薄紅色の缶をそっと取り出すと
埃が舞って、薄暗い明りに舞うのがわかった。
「しばらく出してないからね」
美羽はあきれた顔をしている。
「クサルもんじゃないし。僕は必要ないし」
「完全にマスターすれば、私だって・・」
すっと長い彼の手の先から缶を受け取る。
「降りないで」
缶を開けて、美羽は紙の小袋に入った包みを五つほど
取りだし、直立している彼に蓋をして返した。
「そんなんで足りるの?」
「あとは何とかなるわよ・・」
「まあゆっくりしゃべってくれるだろけどね。」
「まだまだ君は読心力までは無理だから
みんな気づかってくれるよ・・」
美羽はコートをはたいて、カバンにドロップを
しまい込んだ。
「ほいじゃね~タマと仲良くするんだよ」
そう言うと彼女は満月の輝く初冬の夜に
姿を消していった。
僕はタマを抱きながら
「大丈夫だよ。用があってちょっと旅に
行っただけだよ。」
そう言うとタマは安心したかのように
大きな目を僕に向けた。
美羽はカバンに衣類をつめながら
僕の話なんか、聞き流しているようだった。
「うん。わかった・・」
ニャオ・・足元に白黒の猫タマがすり寄る。
彼女はタマを抱き上げ顔にスリスリした。
「タマ~しばしの別れじゃ・・」
「あなたも大変だけど、がんばってね・・」
「はいはい。」
「あれ忘れていたわ・・」
そう言うと、彼女は店に電灯を付けた。
昼間でも暗いのに、夜は闇だ。
まるで大学の研究室のような、狭い空間に棚がいっぱい
あって、ヘンテコリンな物が沢山あった。
「すらすらドロップは何処だったかしら・・」
「えっと・・」僕も店に出て一緒にさがした。
ぐるっと見渡す。
「あれだ・・随分上だ。待って・・」
そういうと、僕は奥から踏み台をもってきた。
薄紅色の缶をそっと取り出すと
埃が舞って、薄暗い明りに舞うのがわかった。
「しばらく出してないからね」
美羽はあきれた顔をしている。
「クサルもんじゃないし。僕は必要ないし」
「完全にマスターすれば、私だって・・」
すっと長い彼の手の先から缶を受け取る。
「降りないで」
缶を開けて、美羽は紙の小袋に入った包みを五つほど
取りだし、直立している彼に蓋をして返した。
「そんなんで足りるの?」
「あとは何とかなるわよ・・」
「まあゆっくりしゃべってくれるだろけどね。」
「まだまだ君は読心力までは無理だから
みんな気づかってくれるよ・・」
美羽はコートをはたいて、カバンにドロップを
しまい込んだ。
「ほいじゃね~タマと仲良くするんだよ」
そう言うと彼女は満月の輝く初冬の夜に
姿を消していった。
僕はタマを抱きながら
「大丈夫だよ。用があってちょっと旅に
行っただけだよ。」
そう言うとタマは安心したかのように
大きな目を僕に向けた。


