急いで帰ってきて、わたしはモノを捨てることに没頭していた。
タオルや歯ブラシから、シーツやクッションカバー。
一緒に調理して、残ったままの小麦粉の袋。
お気に入りだったカップ。鹿茸腎宝
ゴミ袋に入れ終わってみて、少し冷静になる。
わたしは子どもっぽいところが、多分にあり自分の気持ちが赴くままに、過ごしてしまう傾向がある。
それを嫌う男性は多くて、彼もきっとそんなうちのひとりだと思った。
子どもっぽくはあるものの、感情が平淡なわたしは久しぶりに、悲しいという気持ちと寂しいという気持ちを往ったり来たりしていた。
体の関係を持つことにたいして、もしかしたら男性よりも、女性の方が得なんじゃないかと思わせてくれたのは彼が初めてだった。
でも、きっと。
彼はわたしを家族にする思考には至らない。
折角「普通」を求めていたわたしは、また同じことを繰り返すんじゃないかと。
折角ココまでたどり着いたのに、物分かりの良いフリをして、笑顔を張りつけたわたしの将来の顔を想像してみた。
遅かれ早かれ失うものならば、早く失ってしまいたかった。
言い訳が例え何も生み出さなかったとしても。本当は、そんな言い訳をしたかった。
モノに罪はないと言うけれど。
傷ついたココロの痛みを共有する人が、誰もいないわたしにとって、唯一捨てたモノたちだけが捨てられた、わたしの気持ちの理解者なんじゃないかと思ったのだった。
家族が欲しい。
わたしの父も母も、とても優しくて尊敬もしているがわたしが物心ついた時から「仕事で忙しいから、我慢してね」が口癖だった。
そして、後ろめたさをお金やモノで解決しているようだった。
失恋は、決して綺麗なものじゃない。
その証拠に涙は出なくて、喉が締め付けられるように苦しくて、ただただ鼻水が出るだけだ。
<後悔してる>
それは一体どこから始まっているのか、わたしにはわからない。
もしも、彼が同じような気持ちでいてくれたら少しは救われるのにな、と心のどこかで思ってしまっているのに気が付いた。
それくらい<気持ちの共有>というものにわたしは執着してしまっている。
例え吐くほどに苦しいことだとしても。
喜怒哀楽、全てを一緒に考える相手と共に歩んで行きたいと願っている。五夜神
煙草がますます嫌いになった。