2014928(日)

農業はリスクを取るべきか


農業はリスクを取るべきか

 幕別町のメガファームが一元集荷多元販売のホクレンのシステムから離脱したことが、時代遅れの制度に一石を投じたと報じられた。

 このメガファームの自己責任での経営判断には敬意を表したいが、「ホクレン離脱」に拍手を送る人々の中に「農家は国の保護があって、リスクを取らずに経営ができる。ずるい」という声が少なからずあることは懸念されることだ。

 そもそも、農業はリスクを取って経営すべきものなのかと思う。気候変動や自然災害のようなリスクもある中で、いかにそれらの影響を最小限に抑えるかに日々努力し、いつものように安全な農産物を生産すべく汗を流すのが農業の姿である。

 また、6次化に取り組むことが農家がこれからの時代を生き残るための手段だとするのが農政のトレンドであるようだが、6次化に取り組む農業者には、それぞれの目的と事情があり、特色ある商品づくりが農業の主たる目的であるとは到底思えない。農産物の質の向上とその取り組みに対する消費者の理解推進の先頭に立つというのがその役どころであると思う。

 過度な競争やリスクを農業に持ち込むのが農政改革ならば、まずは健全な農業の姿を示して、新規就農対策の強化によってそれを持続できるようにすることが必須である。



2013925(水)

新規就農は甘くないが、なくてはならない


新規就農は甘くないが、なくてはならない

 第4回新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」、熱気に包まれて開催できました。そして、時代の変化とともに新たな課題も見えてきました。

 7月13日(土)は、暑い日でした。当初、曇り時々雨の予報で心配しましたが、参加者の心がけが良かったようです。

 59名の参加者は、新規就農(参入)を目指して研修中の牧場従業員、酪農ヘルパー、学生などの熱い若者たちと、すでに就農を果たしている先輩酪農家、試験場職員、大学教員、自治体職員、農水省職員、その他おせっかいやきの厚い人々など。

 まずは、新規参入で平成17年に就農した芽室町の皆川牧場を視察しました。ペレニアルライグラス草地に放牧しながら、9,000kgの個体乳量、乳脂率3.9%、無脂固形8.8%、分娩間隔409日、平均産次数3.6を実現していることなどの説明を受け、参加者は熱心に質問していました。

 芽室町での1年間の実習や、その後の6年間のヘルパーとしての実績があったことが、地域の人たちの支援を得て、就農に結び付いたという体験談は、新規参入希望者にとっては貴重であったと思います。

 牧場視察の後は、「新参入希望者の希望と不安」と題して、帯広畜産大学の瀬尾先生に講演していただき、ディスカッションを行いました。

 新規参入希望者へのアンケートの結果、思い描く酪農像としては、「低投入」「生活にゆとり」「家畜福祉」を望み、「高泌乳」「大規模」を望まない傾向がはっきりと見られ、これが、受入側、特に農協の方針と合わないのが現実です。

 低投入の酪農で生活にゆとりが持てるような経営が、就農初代で実現できるほど現実は甘くはありません。物の豊かな環境で育った彼らに、お金がなくてもゆとりのある生活が送れる開き直りがあるかどうかも不明です。

 それでも、新規参入就農者はなくてはならない存在だと思います。

 それは、彼らがどんな酪農をやりたいかを明確にイメージしており、もうかりさえすればどんな方法でもよいとは思っていないからです。牛の健康や環境に配慮した持続可能な経営を目指す志の高さは大いに評価すべきと思います。

 酪農の現状は、投資の回収のため規模拡大を繰り返す「ゴールなき規模拡大」が顕著であり、循環型の持続的な酪農とは全く別の方向へ走っているようにしか思えません。

 新規就農者は酪農業界の希望であり、地域の酪農家にとっての刺激です。

 思い描く酪農像の実現のため、傾斜が多いとか圃場が四角でないとかで、放牧以外に土地を有効に利用する手立てがないような場所を地道に探すか、思い切って農地の安い道北に土地を求めるのも一つの解決法でしょう。牛がいなければ生産が上がらないような土地で営農することこそ酪農の醍醐味でしょう。

 農地や空き牧場のきめ細かな情報が、その場所での就農に最適な担い手に届くように機能するネットワークづくりを急がなければなりません。



2013520(月)

第4回新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」


 平成14年から平成16年に3回開催した後、休止していた新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」を9年ぶりに開催します。

 新規就農を目指して頑張りながらも壁にぶつかっている方、仲間と交流して横のつながりを広げたいたい方、すでに就農を果たした方、新規就農を応援したいと思っている方のご参加をお待ちしています。

 特に放牧で新規就農したいと思っている方、ぜひご参加ください。

  
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   第4回新規就農情報交換交流会「清水に集まれ!」

○日時 平成25年7月13日(土)午後13時から(12時30分受付)
○場所 清水町少年自然の家(清水町字羽帯南10線94番地3)

○開催趣旨
 国は自給飼料基盤に立脚した畜産の推進は重要な課題と認識し、畜産関係者の取り組むべき施策の方向性を明らかにする「酪肉近代化基本方針」においても、「資源循環型で環境負荷軽減に資する自給飼料基盤に立脚した酪農及び肉用牛生産への転換」としてしっかりと位置づけています。
 また、力強い農業構造実現に向けては、人と農地の問題を解決しなければならないとして、青年新規就農倍増プロジェクトを打ち出すなどしています。
 土地利用型の農業の典型である放牧酪農への新規就農の実現は、国が位置付ける理想の形態といえるはずです。
 しかし、放牧での新規就農の難しさは、技術が向上しているにもかかわらず、第1回の「清水に集まれ!」を開催した10年前より改善しているどころか、厳しさが増しています。
 1月に開催された十勝酪農セミナーで、「あなたはどのタイプの経営を目指すか」と提示された5つのモデル農家は、つなぎ飼いであったり、フリーストールであったり、ロボット搾乳だったりしますが、いずれも搾乳牛100頭以上で乳量11,000kg/頭以上。50頭規模で乳量8,000kg/頭の経営は想定されていませんでした。
 酪農の専業・分業化が進み、メガファームが規模拡大を競う中で、志ある若者が個人の力で新規就農を果たしていくのは容易なことではありません。
 技術、資金力に加えて、以前にも増して、強い意志とまわりのサポートが必要だと感じます。
 今こそ、新規就農情報交換交流会を開催し、就農希望者同士、新規就農の先輩、関係者の交流と情報交換を行い、本来あるべき酪農の姿を再考するとともに、地に足の着いた新規就農を実現する一助としたいと思います。

○内容

 開会式(13:00~13:30)
  主催者あいさつ
  日程説明

 移動(13:30~14:00)
  乗り合わせ 

 視察(14:00~15:30)
  皆川牧場(芽室町)
   牧場概要
   就農経過説明
   放牧について
   質疑応答

 移動・休憩(15:30~16:30)

 研修(16:30~18:00)
  上羽帯少年自然の家
   講演「新規就農に関するアンケート調査から」
             帯広畜産大学瀬尾哲也氏
   グループディスカッション(視察、講演をふまえて)

 休憩(18:00~19:00)

 懇親会(19:00~22:00)
  焼き肉&キャンプファイヤー

 就寝(随時)
  上羽帯少年自然の家
   寝具は各自持参
   宿泊料は町民無料、町外600円/人
   五右衛門風呂あり
   トイレは洋式もあるが非水洗

 閉会(自由解散)、後片付け

○会費 
 参加料  500円   
 懇親会費 3,000円     
 宿泊費  600円(町民外)

○募集期日
 平成25年6月30日

○問い合わせ・申し込み先
  
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 参加申込書

 氏名

 所属

 住所

 連絡先(電話・メール)

 参加(○印)
   視察  研修  懇親会



2013318(月)

TPP参加は消費者の利益?


 首相のTPP交渉参加表明の記者会見で、ある女性記者の質問が気になりました。

 質問は、TPPに参加することで農業は大打撃を受けるというが、それは消費者が受ける利益と比較してどちらが大きいのかというようなものでした。

 首相は、農業には重要な多面的機能があり、守っていかなければならないと答えていましたが、何か本当に大事なことを置き去りにしているような質疑応答だったと感じました。

 それは、外国から安い農畜産物が入ってくることが消費者の利益になるという前提に立っているからです。

 消費者の利益とは価格の安さなのでしょうか。

 今日食べたものが明日自分の体になると思えばそうは言えないはずです。

 地産地消、医食同源の思想こそが生物としての人の利益ではないでしょうか。

 アレルギーの苦しみを持てば、安さで食料を選ぶことはできなくなります。

 ポストハーベスト農薬のかかった農産物をこれ以上増やすことが消費者の利益なのでしょうか。

 非選択性除草剤と遺伝子組み換え作物を組み合わせた農業から生まれた農産物を、知らずに口にするのが消費者の利益なのでしょうか。

 ホルモン剤を注射して乳量を増やしてまで競争力を向上させている牧場から生産された乳製品を口にするのが消費者の利益なのでしょうか。

 化石燃料を焚いて運んで来たものを食べながら、温暖化防止のために節約生活をするのがスマートな生き方なのでしょうか。

 もちろん、国内の農業に食の安全についての100%の優位性があるわけではありません。

 農家にも、土づくりをしっかりして健康な作物を育て、農薬の要らない農業をめざしていくことが求められます。

 食料・農業・農村を正しくしていくことが国民の利益であるはずです。

 消費者の利益が国内農業を守ることで損なわれるなどという発想がある限り、日本はまともな国にはならないと感じます。



201311(火)

たかの勝仁後援会長として迎えた新年


○不出馬ごめんなさい

 4年前、町長選で敗れて、私は酪農家に戻りました。あの時の、十二月に入ってからの出馬表明は、迷いに迷った末、えいやっと身を投げるような決断でした。「一回だけトライさせてくれ、勝てば町長、負ければ牛飼い。」と言って妻を説得しました。

 しかし、九十五票差という僅差での負けだったため、再度のチャレンジを期待する声が大きくなってしまい、はっきり、もうできませんと言えなかったことで、多くの皆さんにご迷惑をおかけすることになってしまいました。そのことは、本当に申し訳なく思います。

 酪農家としてやりたいことはたくさんありました。土地利用型農業としての酪農経営。輸入穀類にできるだけ依存しない自立した経営。その成果としての独自ブランド乳製品の販売。酪農に新規参入を目指す若者の支援。酪農を都市の人々に理解してもらう交流活動。酪農経営そのものを資源とした滞在型体験観光。今、それらは、本当に小規模ではありますが、実現しつつあります。

 今、それらを放り出すことはできなくなってしまいました。清水町という町は新しいことを始める人に冷たく、出る杭は打たれるため、ああしたらいい、こうしたらいいとアイデアを持った人はすごくたくさんいるのですが、それを実行する現場のプレイヤーがいません。やったらいいと思うことはことはまず自らがやってみるしかないと強く思うようになりました。

 そんな中で、高野勝仁さんは、30年近く勤めた役場を退職して、まちづくりの先頭に立つことを決心してくれました。

○私が議員になるきっかけを作った人

 生活の安定を理由に公務員をめざす人が少なくない中で、その職をなげうって、町のために働こうという彼の強い意志に、私は敬意を表したいと思います。そして、彼ならば、私を支援してくださった方たちにも申し訳が立つとの思いから、後援会長を引き受けました。

 彼との出会いは12年前になります。右肩上がりだった町の財政が下り坂に転じ、今までのようにお金を使っていたら、町の財政は借金だらけで破綻してしまう危機的状況でした。

 そのことを、担当していた「広報しみず」に書こうとしたのですが、町民を不安にするとの理由で止められました。町民に正しい情報を伝えなければ正しい町政はできない。そう感じた彼は、町民を巻き込んだまちづくりの勉強会を作りました。私も誘われてこの会に入りました。そこで学んでいくうちに、町議会議員になることになり、町長選にも出馬することになりました。

 町職員や町議会議員だけでなく、ふつうの町民も町のことをよく知り、みんなで町を良くしていこうということで、まるごと向上委員会と名付けられたこの勉強会は、町議会議員の会派や町の課長会、各種団体と懇談会を開いたほか、北大の宮脇先生や北海学園の森先生を相次いで講師に招き、財政危機を町民で議論するフォーラムを開催しました。

 最初は、自治体が倒産するなんてことがあるわけないだろうと言われましたが、この活動があったからこそ、町民全体が危機感を持って、一足早く財政再建に取り組むことができたのだと思います。高野勝仁さんがいなければ、財政健全化のの取り組みはもっともっと遅れていたことは間違いありません。

○これからは先見性が大事

 リーダーに必要なことは、先を見通してどこに向かうかをほかのものより先に知り、必要なことが実行できることだと思います。

 財政危機から目をそらし、問題を先送りしようとした上司たちの方針に疑問を感じ、勉強会を作った高野勝仁さんの先見性こそが、これからの時代に必要とされると考えます。

 現町政に不満のない人々が多いということは、問題を先送りしてぬるま湯につかっていることに多くの人が気付いていないということでもあります。

 国の予算の半分が借金であること。東日本大震災の復興に莫大な費用が必要なこと。少子高齢化で社会保障の負担が重くなること。どう考えても、財政的にはこれからの方が厳しくなるのは明らかなのに、清水町の財政問題は一段落したかのような発言が聞こえてくるのはどういうことでしょうか。

○少子高齢化時代のまちづくり

 これからの時代に対する不安は、単なる不安ではありません。少子高齢化は必ず直面する、避けられない現象です。がんばれば少子高齢化を止められると考えるのではなく、少子高齢化の下でも幸せに暮らせるためにどうすればいいのかを逃げずに考えることが大事です。

 そして、確実に来るであろう事態への対応は、一日でも早くすることが肝心です。しかし、清水町には崖っぷちに追い込まれないと取り組まない悪文化があります。そこを変えられるのは、先見性を持ったリーダーしかいません。

 過去の右肩上がりの時代の成功体験が、正しい選択を妨げることになると考えます。

 10年後、20年後の人口、年齢構成を考えながら、その頃の町民に理不尽な負担をかけない計画的な社会資本整備、コンパクトな都市計画、町民の起業や自主的な活動の支援、病後の治療から予防や健康づくり重視への転換など、発想の転換が必要です。

 あのころは良かった、がんばって何とかしてあのころに戻りたい、という気持ちのままでは、これからの時代にしあわせなまちをつくることはできないと思います。



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 ABOUT
橋本てるあき
橋本牧場(酪農)場主

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年齢50代
エリア清水町
属性個人
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