まちづくり・政治(59)


2013318(月)

TPP参加は消費者の利益?


 首相のTPP交渉参加表明の記者会見で、ある女性記者の質問が気になりました。

 質問は、TPPに参加することで農業は大打撃を受けるというが、それは消費者が受ける利益と比較してどちらが大きいのかというようなものでした。

 首相は、農業には重要な多面的機能があり、守っていかなければならないと答えていましたが、何か本当に大事なことを置き去りにしているような質疑応答だったと感じました。

 それは、外国から安い農畜産物が入ってくることが消費者の利益になるという前提に立っているからです。

 消費者の利益とは価格の安さなのでしょうか。

 今日食べたものが明日自分の体になると思えばそうは言えないはずです。

 地産地消、医食同源の思想こそが生物としての人の利益ではないでしょうか。

 アレルギーの苦しみを持てば、安さで食料を選ぶことはできなくなります。

 ポストハーベスト農薬のかかった農産物をこれ以上増やすことが消費者の利益なのでしょうか。

 非選択性除草剤と遺伝子組み換え作物を組み合わせた農業から生まれた農産物を、知らずに口にするのが消費者の利益なのでしょうか。

 ホルモン剤を注射して乳量を増やしてまで競争力を向上させている牧場から生産された乳製品を口にするのが消費者の利益なのでしょうか。

 化石燃料を焚いて運んで来たものを食べながら、温暖化防止のために節約生活をするのがスマートな生き方なのでしょうか。

 もちろん、国内の農業に食の安全についての100%の優位性があるわけではありません。

 農家にも、土づくりをしっかりして健康な作物を育て、農薬の要らない農業をめざしていくことが求められます。

 食料・農業・農村を正しくしていくことが国民の利益であるはずです。

 消費者の利益が国内農業を守ることで損なわれるなどという発想がある限り、日本はまともな国にはならないと感じます。



201311(火)

たかの勝仁後援会長として迎えた新年


○不出馬ごめんなさい

 4年前、町長選で敗れて、私は酪農家に戻りました。あの時の、十二月に入ってからの出馬表明は、迷いに迷った末、えいやっと身を投げるような決断でした。「一回だけトライさせてくれ、勝てば町長、負ければ牛飼い。」と言って妻を説得しました。

 しかし、九十五票差という僅差での負けだったため、再度のチャレンジを期待する声が大きくなってしまい、はっきり、もうできませんと言えなかったことで、多くの皆さんにご迷惑をおかけすることになってしまいました。そのことは、本当に申し訳なく思います。

 酪農家としてやりたいことはたくさんありました。土地利用型農業としての酪農経営。輸入穀類にできるだけ依存しない自立した経営。その成果としての独自ブランド乳製品の販売。酪農に新規参入を目指す若者の支援。酪農を都市の人々に理解してもらう交流活動。酪農経営そのものを資源とした滞在型体験観光。今、それらは、本当に小規模ではありますが、実現しつつあります。

 今、それらを放り出すことはできなくなってしまいました。清水町という町は新しいことを始める人に冷たく、出る杭は打たれるため、ああしたらいい、こうしたらいいとアイデアを持った人はすごくたくさんいるのですが、それを実行する現場のプレイヤーがいません。やったらいいと思うことはことはまず自らがやってみるしかないと強く思うようになりました。

 そんな中で、高野勝仁さんは、30年近く勤めた役場を退職して、まちづくりの先頭に立つことを決心してくれました。

○私が議員になるきっかけを作った人

 生活の安定を理由に公務員をめざす人が少なくない中で、その職をなげうって、町のために働こうという彼の強い意志に、私は敬意を表したいと思います。そして、彼ならば、私を支援してくださった方たちにも申し訳が立つとの思いから、後援会長を引き受けました。

 彼との出会いは12年前になります。右肩上がりだった町の財政が下り坂に転じ、今までのようにお金を使っていたら、町の財政は借金だらけで破綻してしまう危機的状況でした。

 そのことを、担当していた「広報しみず」に書こうとしたのですが、町民を不安にするとの理由で止められました。町民に正しい情報を伝えなければ正しい町政はできない。そう感じた彼は、町民を巻き込んだまちづくりの勉強会を作りました。私も誘われてこの会に入りました。そこで学んでいくうちに、町議会議員になることになり、町長選にも出馬することになりました。

 町職員や町議会議員だけでなく、ふつうの町民も町のことをよく知り、みんなで町を良くしていこうということで、まるごと向上委員会と名付けられたこの勉強会は、町議会議員の会派や町の課長会、各種団体と懇談会を開いたほか、北大の宮脇先生や北海学園の森先生を相次いで講師に招き、財政危機を町民で議論するフォーラムを開催しました。

 最初は、自治体が倒産するなんてことがあるわけないだろうと言われましたが、この活動があったからこそ、町民全体が危機感を持って、一足早く財政再建に取り組むことができたのだと思います。高野勝仁さんがいなければ、財政健全化のの取り組みはもっともっと遅れていたことは間違いありません。

○これからは先見性が大事

 リーダーに必要なことは、先を見通してどこに向かうかをほかのものより先に知り、必要なことが実行できることだと思います。

 財政危機から目をそらし、問題を先送りしようとした上司たちの方針に疑問を感じ、勉強会を作った高野勝仁さんの先見性こそが、これからの時代に必要とされると考えます。

 現町政に不満のない人々が多いということは、問題を先送りしてぬるま湯につかっていることに多くの人が気付いていないということでもあります。

 国の予算の半分が借金であること。東日本大震災の復興に莫大な費用が必要なこと。少子高齢化で社会保障の負担が重くなること。どう考えても、財政的にはこれからの方が厳しくなるのは明らかなのに、清水町の財政問題は一段落したかのような発言が聞こえてくるのはどういうことでしょうか。

○少子高齢化時代のまちづくり

 これからの時代に対する不安は、単なる不安ではありません。少子高齢化は必ず直面する、避けられない現象です。がんばれば少子高齢化を止められると考えるのではなく、少子高齢化の下でも幸せに暮らせるためにどうすればいいのかを逃げずに考えることが大事です。

 そして、確実に来るであろう事態への対応は、一日でも早くすることが肝心です。しかし、清水町には崖っぷちに追い込まれないと取り組まない悪文化があります。そこを変えられるのは、先見性を持ったリーダーしかいません。

 過去の右肩上がりの時代の成功体験が、正しい選択を妨げることになると考えます。

 10年後、20年後の人口、年齢構成を考えながら、その頃の町民に理不尽な負担をかけない計画的な社会資本整備、コンパクトな都市計画、町民の起業や自主的な活動の支援、病後の治療から予防や健康づくり重視への転換など、発想の転換が必要です。

 あのころは良かった、がんばって何とかしてあのころに戻りたい、という気持ちのままでは、これからの時代にしあわせなまちをつくることはできないと思います。



20111020(木)

修学旅行受入は生徒達のためならず


修学旅行受入は生徒達のためならず

 今年、26戸の農家で十勝清水農村ホームステイ協議会を立ち上げ、年度途中からではありましたが、本州の高校の修学旅行の受入れをさせていただきました。

 最初はホスト農家との対面に緊張していた生徒たちも、作業体験、一緒の食事、おしゃべりをして1泊のホームステイを終え、集合場所の文化センターに戻ってきたときには、すっかり笑顔になっていました。そして、別れの時には目を潤ませてバスに乗り込んでいき、いつまでも手を振っていました。

      
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 最後のあいさつで自分の体験したことを一つ一つあげて感謝の言葉を話す生徒たちの姿に、私たちも「本当にいい子ども達だなぁ」と、じーんと来ていました。

 生徒たちは、初めてづくしの体験とホストの親切に感動し感謝してくれていましたが、感謝しなければいけないのは私たちも同じです。

 自然環境の素晴らしさや農業・農村の価値を、生徒たちの驚きを通して再認識することができました。ベテラン農家であるほど忘れてしまっていた当たり前のことを思い出させてくれました。都会的な刺激にあこがれる若い農家に農業の楽しさを気付かせてくれました。

 協議会設立に賛同しホストとして参加している農家には、農業が嫌でたまらないとか、この町が嫌いだとかいうメンバーはいません。都会の子ども達に食と農の大切さ、農業・農村の価値を知ってもらいたい、伝えたいという思いがあるから、この協議会に参加しているのだと信じています。

 この事業を継続していくことが、都市の人々を変え、農村も変わることにつながるのではないかと考えています。



2011131(月)

メリットなんて考えたら議員はできない


 清水町議会選挙は1月11日無投票で終わりました。告示日ぎりぎりの立候補が相次いで、かろうじて定員割れは免れたものの、議員のなり手がいないことが露呈しました。

 私も元議員として、このような事態に至ってしまったことについて、少なからず責任を感じています。

 新聞報道によれば、この傾向は統一地方選を春に控えた各市町村議会でも同様で、引退する議員の後継が決まっていないケースが多いとか、厳しい少数激戦が予想されています。

 その理由として、本業との両立が困難で現役世代が手を上げずらいとか、組織や地域として議員を選出することの利益がなくなったとか、議員本人や議員を支持する団体のメリットがうすれたことが挙げられています。

 しかし、議員になる、あるいは、議員を出すときにメリットを考える時代は、私が初めて立候補した平成15年にはすでに終わっていました。

 地方交付税が減少に転じ、財政破たんが現実のものとなる中で、予算を身内のために引っ張る議員活動なんてありえません。

 あの時、私が立候補したのは、まちづくりの勉強会の活動の中で清水町財政の危うさを知り、清水町を赤字団体にしてはいけない、将来につけを回してはいけないと、怒りに近い危機感を覚えたからであって、議員になることのメリットなんて考える余地はありませんでした。

 逆に言えば、よほど後先考えないくらいに思いつめなければ、現役世代の普通の人が議員選挙に出るなんてことはないのかもしれません。

 今回の選挙で告示当日になってから立候補の届け出をして当選した2人の40代議員には、自らの政見を伝える活動なしに議員になってしまったことへの懸念と、よくよく悩んだ末に決心したことへの謝意の両方を感じています。お二人が理想とする町の姿や、今の町の課題が何かわかるような議員活動をしていただきたいと思います。

 議会として取り組むべきことは、とにかく議会を身近なものにすることでしょう。権威主義と様式美を捨てて、実質的な町民の意見反映の場にすることです。

 栗山町などに触発され、各地で議会改革が進められていますが、本町においてはかなりの部分が先送りされています。議会報告会は不要なものとされ、有志議員による合同議会報告会さえも私が辞めた後は実施されていません。

 町民にとっても、議会がしっかりして、町長側をチェックし、提案することは大きなメリットです。

 議員本人にとっても、子や孫のためになることは自らの利益であるはずです。先に述べたことと違うかもしれませんが、長い目で見れば本当はメリットはあるのです。



20101219(日)

口蹄疫に対応した後援会活動・選挙運動を


 12月議会の一般質問で、西山議員が口蹄疫対策で町の取り組みを質しました。

 お隣の韓国で口蹄疫が再び発生しておさまらない状況から、我が国、わが町としても、もっと危機感をもって対応すべきだと迫りました。もっともだと思います。

 しかし、具体的な問題点の指摘や提案はなく、「何かすることがあるはずだ」というばかりでは、いくら声を大きくしても何も進みません。

 清水町は年明けの町議選に向けて、選挙の季節に入ります。後援会活動も活発になってくると思いますが、畜産農家の敷地内への出入りについて、議会内で自粛を申し合わせたというような話は聞こえてきません。

 それぞれの陣営が配慮すべき問題なのかもしれませんが、議員は、執行側に対策を迫るばかりでなく、議会としてもできうる対策を考えなければならないと思います。

 ウイルスに「選挙は別」は通用しません。



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橋本てるあき
橋本牧場(酪農)場主

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