20101011(月)

コナツ1/山ン婆1


今日の一言
嫌いなものを間違っていると、好きなものを正しいと、思うなよベイベー

コナツ1(FC2時代)

俺は高校時代、バスケ部だったわけだが、今年の正月に当時のバスケ部の仲間が集まって、札幌琴似の居酒屋で酒を飲んだのだ。

全員ではなかったが、男子部と女子部とマネージャーが集まり、これなかった奴に電話したり、試合の話や、練習の時の話など、みんなも経験しているような、そんなたのしい時間を過ごしたわけだ。

俺は高校時代からバスケットをはじめた。
男子部で高校からはじめたのは、俺ただ一人だったんだ。
俺は、バスケをなめていたのを入部1日目から痛烈に感じることになったんだ。

とにかく、しんどかったんだ。

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バスケは全力ダッシュ、ストップ、ダッシュのスポーツだ。
全身から力が抜けるようなしんどさ。他のメンバーはパッパとシュートを当たり前のように入れ、声を出し、相手に抜かれないディフェンスをして、涼しい顔で早い切り替えをしている。

俺は100%決めて当たり前のランニングシュートは入らず、ディフェンスも抜かれ、声もでず、両手をヒザで支え、下を向いていた。

そんな中、俺にとって励みになる存在が女子部にいたんだ。
それは、同じく高校からバスケをはじめ、俺と同じように、うまくできず、苦しい顔をしていたコナツだ。

自分と同じ立場で、苦しい状態にあるコナツの気持ちが、俺にはスゴクよくわかったんだ。

コナツは俺の同志だった。おたがい、失敗ばかりの繰り返しで、シュート落とした奴だけが受けるリピート練習やバツゲーム的なつらいフットワーク練習を、何度も一緒にやっていたんだ。

部活で一番体力のない、俺とコナツが、さらに走らされるんだ。

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ちょっと、脱線してしまったが、俺はコナツにシンパシーを感じていた。これは恋愛とかではなく、同じ泥をかじった同志としてのだ。

そして、話を戻すと、20年後のその飲み会で、コナツと当時のことを話して、とても楽しかった。

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コナツはまだ独身だ。
彼女は演劇が好きで、今でも派遣の仕事をしながら劇団をしている。

正直言って、俺は二つの考えをそのときに抱いた。
一つは彼女は趣味で、好きで劇団をやっていてるんだなぁということ。趣味をもつってのは、いいもんだと思った。そして気楽そうだなとも。
そして一つは、彼女は何を目指しているんだろう、ってことなんだ。

正月も終わり、俺は彼女の劇団の名前でググッてみたんだ。
数件のヒットがあったが、オフィシャルページ的なタイトルをクリックしてみた。
味もそっけもない、テキストだけのそのHPに、講演日と場所が書いてあった。


そのあと、俺は胸を揺さぶられる衝撃を受けることになるのだが、次ぎのエントリーでそれを書こうと思う。

山ン婆1
顔がこそばゆい。
何度も払いのけるのだが、目を開くほどでもなく。
かといって、深い眠りに何度もおちたのか、おちていないのか。それすらも定かではないが、とにかく眠りたかった。

また顔がこそばゆい。
おおかた、秋の蝿が露出した顔で暖をとっているのだろうとおもいながら、何度も払いのけるうちに、手がそのモノをつまむことに成功した。

それが何であるかもたしかめもせず、眠りを邪魔された怒りから、そのモノをつまみつぶした。
その感覚は明らかに蝿よりも固く、大きかったのだが、それが何かもたしかめるわけでもなく、俺はまた眠ろうとしたのだ。

眠りながらも、体が芯から冷え、間違いなくヒドイ風邪を引くだろうと眠りながら考えるのだが、とにかく眠りたかった。
顔がまたこそばゆい。
眠りながらも容易につまむことができたそれを、ようやく目を開けて確認した。ゲジだった。さらによく見ると、それは体節に足が二組あるヤスデのデカイやつだ。

俺から死臭が発せられていたのか。
手で払いのけることをしなければ、俺の目尻や目頭には蝿が目くそのような卵を産み落とし、鼻からヤスデが入り込み粘膜を囓っていたにちがいないのだ。

俺は生きていた。
それから、かじかんだ体のサキッポを体の中に沈めるようにし、記憶をたどった。ようやく右の膝頭が痛み出した。

座り込んだササ原。大きな石がコケの生えた地面からその一部を山のように出していて、子供のころテレビで見た孫悟空の誕生した山の中のようであった。なぜここにいるのだろう?

それは生まれてはじめて味わう記憶喪失であり、二日酔いの朝の感覚とは全く異なったものだった。それにしても寒い。なんとか山をおりたいのだが、かじかんだ体、痛みのヒドイ膝のせいで、立ちあがる気力がおきない。

少なくとも俺は環境調査の仕事で、この椴法華の山に入り、恵風という宿にとまっていることはわかる。俺が誰なのかも知っているし、業務の目的も明かだ。ただ、ここはどこなのか。どうしてこのようなありさまになっているのかが覚えていないのだ。

あたりは細いミズナラの林にササが密集していて、メガネをどこかに落としてしまった俺には、薄暗くなった林内を道もない斜面の下めがけて歩き出すことが怖かった。かといって、このままここで一夜を過ごすのもはばかれた。

時計を見るともう山用のデジタル時計は17:00をさしていて、当然外灯もない真っ暗な山になるのも時間の問題だ。胸には携帯電話があった。携帯電話で助けを求めようにも、ここがどこだか分からない上、完全に圏外であった。試しに会社にも、実家にも電話してみたのだが、当然かかるはずもない。

液晶のわずかな明かりを頼るしかなくなるまであと1時間もない。懐中電灯を持って山に入らなかった俺には、もはや携帯電話の液晶しか頼る明かりはないのだ。

胸からライターとタバコを取り出し、一服ついた。
何もする気が起きないとき、現実から逃れたいと思うとき、俺はいつも一服するのだ。かじかんだ指先、ガタガタ震えるアゴ、奥歯をカチカチならしながら吸ったタバコはなぜか旨かった。

俺はぼんやりと、数ミリ伸びた足の爪にびっしり土が間詰された黒いつま先をみつめ、暖をとって野宿するしかないと自分を納得させる時間を過ごした。

俺は長靴を履いているではないか?自分の足だと思っていたその汚れた足は自分のもげ落ちた片っぽの足なのか?
俺は股間からのびる自分の両足と、両足にはかれたなじみの長靴を認めることができてホッとした。

その足だと思ったものは、朽ち木や落ち葉でそう見えたのか。
俺はもう一度よく見えない目で、その足をたしかめた。

それはあたたかな、女の足だったのだ。







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むし虫堂
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