むしポエット(4)
2011年1月27日(木)
帯広パンセ/山の人生
むしポエット×4
boku to onnaji kimi he
mushimushidoo
1
あなたは、今、苦しいでしょ。
それは、このままでいると地獄行きだという気持ちになるからでしょ。
わかりもしない未来を、こうなるはずだと思ってるんでしょう。
その未来はろくでもない未来でしょう。
その未来は最低でしょう。
その未来は他に迷惑をかけることでしょう。
その未来はあなたの夢のベクトルとは正反対でしょう。
2
だから、あなたは気をまぎらわしてるでしょう。
だけど、どれだけ気をまぎらわしても、物事は1ミリもうごかないでしょう。
そして、また最低の未来を思い出すでしょう。
そして、頭がパンパンになって、苦しいでしょう。
そしてまた気をまぎらわしてるでしょう。
3
部屋はだんだん汚くなっていくでしょう。
手あらいやうがい、トイレ、ご飯、車の運転、歯磨き、お風呂、すべてが雑になるでしょう。
4
物事を進めようと、手をつけようとすると、そこにはどこから手をつけていいやらわからないような、空虚があるでしょう。
過去を振り返って、あのときはじめていればと何度も思うでしょう。
そしてまた気をまぎらわすでしょう。
5
でもね、
生物の掟には、絶対に逆らえないのです。
モノを落とすと、落ちるのと同じです。生には死が訪れるのと同じです。150歳の人がいないのと同じです。
未来を憂えたとしても、過去を悔やんだとしても、今のあなたには過去も未来もどうにもできないことは、これは生物の掟です。
あなたには、「今このときしかない」ことは、これは生物の掟です。
灰色の未来を憂いても、後悔ばかりの過去を悔やんでも、
未来が順風満帆である予感がしても、過去が栄光に輝いていても、
どっちにしろ、あなたは今しかないです。これは生物の掟です。
生物の掟には逆えらえません。それを受け入れて生きるしかできません。
6
過去や未来を考えて、苦しくなるのは、生物の掟ではありません。あなたの作った気持ちです。
じゃあ、なぜあなたは、過去や未来を考えて苦しくなるんですか?
あなたは心のどこかに、過去や未来を思い煩い苦しむことで、今の問題が解決するという気持ちはないですか?
あなたが思い煩い、未来を悲観して苦しむと、あなたの気持ちのどこかで、奥底で、誰かが、政治家が、天使が、神が、聖人になった明日のあなたが、あなたの問題を解決してくれると思ってるのでしょう。
無意識に。心のどこかで。
だからあなたは、今の問題を、とりかえしのつかない過去を、ろくでもない未来を、わざとらしく思い煩うんだ。
7
それは、あなたが一心に、今の問題を解決したいと思っているからだ。てっとり早く。
生物の成長は遅い。ゆっくりなんだ。これは生物の掟です。
精神も体も、数日のうちに少しつづにしか成長しません。これは生物の掟です。
ゆっくりの方がいいのです。物事も生物体も精神も。
だったら、未来も過去も無にして、今をしっかり、進める方がいい。
今が空虚に見えるのは、あなたのつくった気持ちです。
あなたは今、今の空虚に思い煩い落ち込むことで、あなたの問題が解決する未来が、不思議な力によってかなえられるとどこかで思ったでしょう。
8
これだけはいっておく。
今の物事をしっかりと、丁寧に、行い、問題を解決するために、一つのことをする。
それが最も正しい道であると。唯一の意味ある行動であると。
今に空虚を感じたり、過去を悔やんだり、未来を憂うという気持ちの芽は悪であると。
そんな気持ちの芽が芽生えたら、双葉のうちに抜きなさい。
そして、しっかりと行いなさい。
それしかできないし、それがベストだから。
小さな芽が芽生えたら、ただちに抜きなさい。
今は空虚ではない。今あるのは、あなたの行動だけ。
9
本当に強い奴ってさ、
こんな苦しさがたまりにたまった時に、
笑って、元気だして、逆境ウェルカムで、今に集中して、一つ一つかたづけていく奴だろう。
山の人生-柳田國男の現代版-



2010年12月30日(木)
つらら
むしポエット×4
「あのつららはオレが前から目をつけてたんだ。オレのつららだ」
トタン屋根のボロ屋の立派なつららを指さし、ケン坊が言ったっけ。
つららは不思議とぼろい家に立派なやつができる。
長く太く、地面まで育ったつららは、もう小学生の僕らには手が出ない大物だ。
つららは先っぽがとがってないと、その価値がない。
いいころあいのつららがあった。
手の届く高さ。
先がとがってる。
透明。
そして、きれい。
つららの根元は、太いの、板のように扁平なの、いくつか合わさったような凸凹なの。
どれもいい。
そしてきれい。
ぼくらは、つららをとった。
きれいに根元からとれるかどうかが勝負だ。
おれた時の衝撃で、先っぽがとれてしまわないかが、勝負だ。
大丈夫だ。ちゃんと氷が落ちてこないか注意はしてるのさ。
手頃なのがとれた。
僕らは先っぽをペロペロして、さらにとがらせる。
ツバで潤ったつららの先は、透明で、きれい。かっこよかった。
僕らはそれで、チャンバラをする。
つららの剣と剣が、最初にぶつかった時点でつららの先は折れる。
さんざんペロペロして、針先のようにとがらせたつららが、すぐさま折れるのだ。
だけど、僕らはチャンバラをする。
すぐ折れるのを知っているのに、
チャンバラをする。
そうだ。楽しみがあったんだ。
昨日の学校の帰り道、
つばをつけて
ツルツルぴかぴかにした雪玉を
あの電柱の近くに埋めておいたはずだ。
目印にしていた、雪の上に書いた○の印は、
サラっとつもった雪で、どこにあるのだかわからない。
不思議と昨日かくして、凍らせておいた雪玉はみつからない。
さんざん探して、みつからない。
だけど、みつかったことがあった。
それは、僕の期待していた氷の玉ではなく、
昨日埋めた時よりも、見劣りする玉だった。
これ、ぼくのじゃない。
ぼくのしらない誰かが、ぼくの隠し場所の近くに埋めたものだ。
きっとそうだ。
つららは、ボロい家のつららが立派だ。
今の僕の家のつららは、町内で一番立派なつららに育っている。
「つらら」 むし虫堂
小学校の帰り道
ぼくら3人 横並び
つららをなめて歩いてた
すれ違うおばさん
ばっちい、汚い、やめなさい
かあさんも
屋根につもったいろんなチリが
つららの中に入ってる
大人は頭で考える
笑わせるな
僕はこんな近くで見ている
舌で感じてる
こんなに透明で
きれいだ
僕らは知っていた
つららが汚いなんてウソだってことを
だって僕はみてる
ありのままを
そして
つららはきれいだ
どんなにかじかむ寒い日も
つららをなめてあるいてた
甘い味はしない上
手袋つめたくぬれてくる
だけどそれでもつららをなめる
きれいだから
僕らはみていた
ありのままを
そして
つららはきれいだ
僕は見ている
こんなに近くでなめている
だから
知っている
つららはきれいだって
自分を信じてるんだ
******************
スマイルガーデンさんの「あるがままに」を読んでおもいついた詩です。
トタン屋根のボロ屋の立派なつららを指さし、ケン坊が言ったっけ。
つららは不思議とぼろい家に立派なやつができる。
長く太く、地面まで育ったつららは、もう小学生の僕らには手が出ない大物だ。
つららは先っぽがとがってないと、その価値がない。
いいころあいのつららがあった。
手の届く高さ。
先がとがってる。
透明。
そして、きれい。
つららの根元は、太いの、板のように扁平なの、いくつか合わさったような凸凹なの。
どれもいい。
そしてきれい。
ぼくらは、つららをとった。
きれいに根元からとれるかどうかが勝負だ。
おれた時の衝撃で、先っぽがとれてしまわないかが、勝負だ。
大丈夫だ。ちゃんと氷が落ちてこないか注意はしてるのさ。
手頃なのがとれた。
僕らは先っぽをペロペロして、さらにとがらせる。
ツバで潤ったつららの先は、透明で、きれい。かっこよかった。
僕らはそれで、チャンバラをする。
つららの剣と剣が、最初にぶつかった時点でつららの先は折れる。
さんざんペロペロして、針先のようにとがらせたつららが、すぐさま折れるのだ。
だけど、僕らはチャンバラをする。
すぐ折れるのを知っているのに、
チャンバラをする。
そうだ。楽しみがあったんだ。
昨日の学校の帰り道、
つばをつけて
ツルツルぴかぴかにした雪玉を
あの電柱の近くに埋めておいたはずだ。
目印にしていた、雪の上に書いた○の印は、
サラっとつもった雪で、どこにあるのだかわからない。
不思議と昨日かくして、凍らせておいた雪玉はみつからない。
さんざん探して、みつからない。
だけど、みつかったことがあった。
それは、僕の期待していた氷の玉ではなく、
昨日埋めた時よりも、見劣りする玉だった。
これ、ぼくのじゃない。
ぼくのしらない誰かが、ぼくの隠し場所の近くに埋めたものだ。
きっとそうだ。
つららは、ボロい家のつららが立派だ。
今の僕の家のつららは、町内で一番立派なつららに育っている。
「つらら」 むし虫堂
小学校の帰り道
ぼくら3人 横並び
つららをなめて歩いてた
すれ違うおばさん
ばっちい、汚い、やめなさい
かあさんも
屋根につもったいろんなチリが
つららの中に入ってる
大人は頭で考える
笑わせるな
僕はこんな近くで見ている
舌で感じてる
こんなに透明で
きれいだ
僕らは知っていた
つららが汚いなんてウソだってことを
だって僕はみてる
ありのままを
そして
つららはきれいだ
どんなにかじかむ寒い日も
つららをなめてあるいてた
甘い味はしない上
手袋つめたくぬれてくる
だけどそれでもつららをなめる
きれいだから
僕らはみていた
ありのままを
そして
つららはきれいだ
僕は見ている
こんなに近くでなめている
だから
知っている
つららはきれいだって
自分を信じてるんだ
******************
スマイルガーデンさんの「あるがままに」を読んでおもいついた詩です。
2010年10月13日(水)
初夏の雪/コナツ2
むしポエット×4
初夏の雪
十勝には
年に2回の雪が降る
冬の雪、初夏の雪
6月末の夕焼けに
川辺の泥と化粧の木から
わた毛の雪がとめどなく
地面につもるぐらいまで
髪の隙間にからまった
雪は溶けずにおうちまで、
子供と一緒に自転車に
おかあさんただいま。
かあさん無言でわた毛とる
川のまち十勝には
初夏にやさしい雪が降る
コナツ2
札幌東西線の東札幌駅で俺は降りた。
ポケットには、コナツの劇団のHPを出力したA4の紙を押し込んでた。
2番出口で降り、商店街を過ぎると、そこは工場銀座になっていて、俺はこんなところに劇場なんてあるわけないと、不安を抱えたまま、かといって後戻りする根拠もなく、「ココではない」と回れ右するキッカケを捜して、キョロキョロしていたんだ。
思い当たる企業の工場があった。そこはカメラ屋の工場で、俺はHPの紙を見直し、そのカメラ屋の名前を確認した。どうやら間違っていなかったようだ。

しかし、どこを見ても劇場らしきモノはない。地下か?
とりあえず、駐車場のプレハブの近くに数人の人が見えたので、そこで聞くことにした。工員らしくない髭の男性に劇場を聞くと、そのプレハブが劇場だという。
表に回り込むと、コナツの劇団名と演題がコンパネにはり付けてある看板があった。俺はそのプレハブに入った。ブルーシートの上に毛布が敷き詰められ、どうやらそこに座って見るようだ。受付に1,500円を払い、数枚の白黒コピーをホチキスでとめたようなパンフをもらった。
開演まで40分。数組、あわせて10人ほどの20代から30代の人が、最前列に陣取っていた。俺は一番奥の、一番後ろに陣取り、コンパネがハダカで出ていた壁にもたれた。

幕の内側では、コナツと思われる女の声も聞こえたが、俺はコナツに見つかりたくなかったので、ひたすら下を向き、パンフレットを読んでいたんだ。
「まちむすめの生き方」という題のその演劇は、脚本、演出、主演ともにコナツの名前が書かれていた。
実を言うと俺はコナツを不憫に感じていた。お互い37才にもなるのに、派遣やバイトをして、こんなボロい劇場で素人演芸をして、独身だからできるのかもしれないけど、他の連中は結婚してテラスのあるビストロでスパゲティーを食ってるんだぜぃと。
入り口にポツポツ人が入っているのは見えたが、顔を上げると開演10分前で、狭いプレハブの客席が人で一杯になっていた。100人はゆう越えている。開演直前には客席はギュウギュウ詰めだ。立ち見も多数。
そして開演のブザーが鳴る。暗幕が開き、舞台が始まった。正直、俺は期待していなかった。大学時代、演劇部の友達の舞台を何度か見に行ったが、ストーリーがまったくわからず、しゃべりも聞き取りにくく、結局ワケわからないことばかりだったからだ。間が早くて、考えるヒマもないし。
ところがだ。その舞台は強烈に面白かった。なんといっても主演のコナツが輝きまくっていたんだ。狭い会場がドッと笑い、サイレントの演技では、咳払い一つできないぐらいに、静まりかえり・・・
まちむすめコナツが女とも思えないアホな行動をとるたびに、俺の腹筋が8個に割れるくらい笑った。コナツが麻酔なしで、ばい菌に犯された腕を落とすシーンは足の裏がびしょびしょになり、片手で子育てするシーンは涙で良く見えなかった。
「コナツー、コナツーいいぞ!がんばれ、コナツ!」
俺は声を出したくてしょうがなかったんだ。
こんなすばらしい舞台を俺ははじめて見た。
舞台に幕が下りると、会場は一つになり、大喝采だ。
スタッフ合わせて総勢20人はいると思われる関係者が、衣装のままステージにならんだ。
会場から「コナツー!、コナツー!」と声援がかかる。
俺も負けずに「コナツー、すげぇーぞ、コナツー!」って大声を上げた。
でも、俺の声なんて、他の客の声援でかき消えちまったけど。

俺は、スターコナツのところに行って、お礼を言いたかったけど、なんだか期待していなかった自分が、手の平を返すようで、恥ずかしくて会場を足早に去ったんだ。コナツに声をかけたら、まるで突然有名になった人が言う「親戚が増えた」っていう親戚になっちまいそうだ。
なんも素人演芸じゃねーじゃねーか。
コナツはプロだ・・・プロだった。
コナツの夢は何だろうって、考えてた俺・・・
すでにコナツは夢を叶えているじゃねぇか。
好きでやってること。趣味。プロ。素人。メシが食える。メシが食えない。売れない役者。売れてる役者。
なんだか、俺の知っているテレビの世界が、とんでもなくインチキくさく感じてきた。コナツは、その中に出ている、誰よりもすごかったんだ。
好きを続けることの凄さ。カネがもらえる、もらえないって、なんだかどーでもよくなってきた。
好きを続けて、その先にいる人間そのもの・・・そんなことを考えててさ、一人だったけど、地下鉄の入り口の隣にあった、小汚い赤提灯になんだか入りたくなってさ。
つづく
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