中2病ザナドゥー(18)
2010年10月20日(水)
コナツ5/百万ボルトの微妙キャラ
中2病ザナドゥー×18
コナツ5
オレの会社のあるビルから、帯広の町並みを眺めている。
あれから3年たった。何が変わったのだろうか。
変わったといえば変わったのかもしれない。仕事の量は干されていたあの時と比べれば倍はある。相変わらずなのは、日々の仕事や生活に追われている自分がいて、心のゆとりがないってこと。
オレは役者としてのコナツを見たのが、あれが最初で最後だった。
彼女はあの舞台が大きなターニングポイントとなったとおもうのだけど、それから先は大きな劇団I組の舞台に相手役として出演して以降は、脚本、演出に方にまわっていた。
オレは役者コナツが見たかったのだが、その後劇団のホームページを見ても、コナツの名前があるのは演出ばかりだった。演出といえば、映画でいえば監督なんだから、一番重要な役どころなのはわかるけど、舞台で直接彼女を見られないのことはすこし寂しい気もする。
コナツは舞台が好きなんだなって、改めて思った。劇団の世界なんて何も分からない自分だけど、コナツは確実に自分らしく、自分の好きなものを追求していることぐらいわかる。
あれから、コナツの演出の舞台も見ていない。コナツが舞台に立たないとあっては、札幌と帯広ではなかなか腰が重くなってしまう。そして今やコナツはその劇団の代表者となっている。一方で大きな劇団の助っ人としても、東京公演にまでいっている。そのチケット代は前売りで¥5,500だから、もう立派なプロだとも思うわけだ。
でもそんな表面的なのものではなく、彼女の心にあるのは、自分が思うおもしろい舞台を見て、お客さんが感動することなんだろうと思う。それを彼女の編み出した方法で達成することなんだろう。
実は今仕事机の引き出しの中には、コナツ演出の舞台のチケットが入っている。
12月に札幌琴似で舞台があるのだが、インターネットで手に入れたものだ。オレはバスケ部のメンバーに電話をして、仲間達とその舞台を見る予定だ。
それまでにオレもなんとかしなくては。
へんてこりんなオレの方法で、今おもしろいものをつくっているんだ。いまのところへんてこりんじゃなくて、ヘナチョコだけど。
いずれにしろ、オレもコナツも道半ば、いや、まだ始まってもいないのだ。
自分が好きで進んできた道。
でも、それをやりはじめて慣れてくると、新鮮さを薄れ、ノルマ的なものに毎日押しつぶされそうになっている。楽しいはずの単純作業も、没頭していた調べる作業も、次々にアイディアが生まれた企画の作業も、すべてが時間に間に合わないかもしれないという不安や苦痛がオレの心を支配している。
好きなことを続けるのも大変だな、コナツ。
コナツ続編は、彼女の舞台を見てからまた書こうと思う。
百万ボルトの微妙キャラ
帯広にも家電量販店がいくつかあるけど、俺が行くのは百万ボルトなのね。
昨日も行ってきて、結局ほしいものはなかったんだけど。
あの、卓上のクリップ付きの小さな扇風機。
USBから電源とるタイプのはあったけど、電池式のがなくて、結局ダイソーにクリップ無しのがあって、
それを買ったわけ。
それはそうと、百万ボルトのでかい看板には、片岡鶴太郎がいてね。

今の百万ボルトのイメージキャラクターが片岡鶴太郎なわけ。

そういえば、ついこの前まで百万ボルトのイメキャラは井上順だったっけ。
そこで、俺は片岡鶴太郎と井上順を頭の中で並べてみて、いったいどういう基準で百万ボルトのイメキャラが選ばれているか考えた。
☆片岡鶴太郎
☆井上順
わ、わからねぇーw
微妙すぎて怖い・・・w
いったい何なんだ!? なぜに鶴太郎と順?
それぞれ芸能会で確たるベテランポジションにいて、盛りを過ぎたと思われるこのキャラ。
鶴太郎はボクシングへの挑戦した時点で俺の中では終わっている。
順は俺は好きだが、知らない若者も多いことだろう。
それにしても、家電を売るという点で順や鶴太郎のメリットはなんだろうか。
これが、家電芸人のような奴らなら、なんかインチキくさい気がする。そもそもオレは家電芸人の露骨なアピールがどうも好きになれない。もし彼らが電機屋のキャラになったなら、まるでGパン好きの草薙剛がベストジーニストになったようではないか!ジャニーズ枠と言ってしまえばそれまでだけど、Gパンの似合う奴はもっと他にいるだろう!
話を家電量販店のキャラクターにもどすけど、
松坂慶子や吉永小百合のような美人熟女なら、なんか細かいことはわからないけど・・・みたいな感じでたよりない。反町や織田裕二はなんだか怖い。AKBのような少女なら、おじさんやおばさんは引くだろう。
でも、順なら・・・
ああ、そうか。だから井上順なんだ。
でも鶴太郎なら・・・・うん。いい感じだ(ほんとか?w)。
ちなみにヤマダ電機は、サッカーの中村俊輔と高島政伸を使っている。まあ、これは理解できる。一流のアスリートを使うのは、品質の良さや安心感をアピールできるし。高島政伸ほど、ハッピとハチマキが似合う腰の低い売り子はいないだろw
そういやコジマ電機は、青柳文太郎

青柳文太郎を今だにコジマの名物社長と勘違いしてる奴も多いことだろう。
「よし!青柳文太郎でいこう!」と決めたコジマの企画会議に是非参加したかったわいw
いずれにしろ、この家電量販店のきわめて微妙なおじさんキャラの使い方は、
大いに気に入ったわい。
2010年10月16日(土)
コナツ4
中2病ザナドゥー×18
コナツ4
「金澤君?」
不意をつかれ、コンニャクをつまむつもりが薄い小口切りの葱を1枚だけ箸でつまみ、口に入れた。コナツだった。

「偶然!」とにかく驚いた。舞台を見に行ったことは黙ってようと思った。
「来てくれたんだね。舞台から見えてたよ。」
見えてたんだ・・・
「いかったぁ、コナツ。スゴイ!スゴイんだな」
「ありがとう、ビックリしてさ、嬉しかったけどやりにくかったさぁ」
その居酒屋「いろり」はコナツの劇団の御用達で、今日も舞台の打ち上げが行われるようだった。入ってきた集団はコナツの劇団の人たちと、知り合いのファン達だった。
その後コナツはその仲間達と座敷で打ち上げをしだした。やはりみんな頑張った舞台らしく、やたらとテンションが高い。
背中でコナツの挨拶や劇団員の話を聞きながら、俺は一人、親しい仲間が別団体で呑んでいるという、なんとも心地悪い感じで呑んでいた。今呑んでいる3本目のビールを飲んだら、帰ろうと思った。
「ママ、お銚子2合二つね!」
そう注文してコナツが隣の席に座った。
「ありがとうね。来てくれて。はじめてかなぁ。バスケの仲間が来てくれたのは。」
「いい芝居だった。引き込まれた。」
安い日本酒のアルコール臭を鼻で感じながら、俺はコナツの注ぐおちょこを何度も一気呑みした。

「コナツ、酔っぱらったから言っちゃうけど、お前は夢を叶えたんだな。」
「何言ってるの?この年までバカやってるだけだよ。好きなことやってるだけで、社会には何の貢献もしてないんだよ」
「いや、その辺のテレビで見るより、何倍もお前はすごかった。正直言ってね、俺はバイトや派遣をやりながら芝居を続けてるコナツが、不憫に感じてたんだ。でも違った。お前は俺なんかより、何倍もすごい」
すこし間があった。コナツはきっと、不憫という意味を考えてたんだと思う。変な言い方だったかな?コナツならきっとバリバリ仕事して、バリバリ稼ぐことができる女なのに、バイトや派遣という選択をわざわざ自分で選んで・・・という意味だったんだけど。
「ありがとう。私、金澤くんのこと尊敬してた。私と同じく高校からバスケはじめて、スタメンで活躍して、札幌地区で勝ち進んで。私なんて万年ベンチで、後輩に抜かれて・・・」
「そんな、昔のこと・・・だけど俺ってバスケ好きだったのかなぁ?って今日の芝居見てて思った。そして俺は今の仕事が好きなのかなって。いろんな好きなことや、好きな人なんかを、ただあきらめて、生きて来たのかなってさ。」
「私ね、正直バスケが好きじゃなかったかもしれない。仲間がいたから続けてたけど。」
コナツの言うことが、なんとなく分かった。コナツは普段女子バスケの輪の中心にいたけど、プレーでは別だったし。俺と同じく不器用で、楽しむというよりも、回りに迷惑かけないことで一生懸命だったんだ。それは俺も同じだったから、痛いほどわかった。
「でもね、我慢しながらも本当にしんどい練習だったしょ?だから、根性ついたよ。好きな演劇もさ、道具から営業からいろいろな仕事あるし、今の派遣の仕事もとりわけ好きな仕事でもないしね。根性って大事。バスケしてなかったら、きっと芝居もなげだしてたかも。」
俺はおちょこの底を見つめながら、うなずいて、しばらくバスケ時代のことをおもいだしていたんだ。辛かった練習を。
すると、突然コナツがこういった。
「金澤君、ぜったいに後悔しない生き方って知ってる?」
間髪入れずに、コナツは続けた。
「好きなことをね、自分の考えたやり方で、誰もやったコトのない自分のアイディアで、続けることだと思うんだよね。」
「そしてね、ハタから見て、それがバカげてるほどいいの」
俺はそのとき、胸いっぱいに空気をいれられたような、何かあれば破裂しそうな感覚をもった。もしそのときコナツがとんでもなく、不細工な変な顔をして見せなければ、コナツと比べてあまりにも小さな自分を認めて、いてもたってもいられない気持ちになっていたんだ。

「な、なした?」俺は突然のことで正気に戻れた。
「家や稽古場で、こんな顔してるの。最低の顔を練習するとね、いい演技ができるって、信じてやってる」
俺はコナツと大笑いしたわけだけど、俺は本当はただ、ただ、打ちのめされていたんだよ・・・
2010年10月11日(月)
コナツ1/山ン婆1
中2病ザナドゥー×18
今日の一言
嫌いなものを間違っていると、好きなものを正しいと、思うなよベイベーコナツ1(FC2時代)
俺は高校時代、バスケ部だったわけだが、今年の正月に当時のバスケ部の仲間が集まって、札幌琴似の居酒屋で酒を飲んだのだ。
全員ではなかったが、男子部と女子部とマネージャーが集まり、これなかった奴に電話したり、試合の話や、練習の時の話など、みんなも経験しているような、そんなたのしい時間を過ごしたわけだ。
俺は高校時代からバスケットをはじめた。
男子部で高校からはじめたのは、俺ただ一人だったんだ。
俺は、バスケをなめていたのを入部1日目から痛烈に感じることになったんだ。
とにかく、しんどかったんだ。

バスケは全力ダッシュ、ストップ、ダッシュのスポーツだ。
全身から力が抜けるようなしんどさ。他のメンバーはパッパとシュートを当たり前のように入れ、声を出し、相手に抜かれないディフェンスをして、涼しい顔で早い切り替えをしている。
俺は100%決めて当たり前のランニングシュートは入らず、ディフェンスも抜かれ、声もでず、両手をヒザで支え、下を向いていた。
そんな中、俺にとって励みになる存在が女子部にいたんだ。
それは、同じく高校からバスケをはじめ、俺と同じように、うまくできず、苦しい顔をしていたコナツだ。
自分と同じ立場で、苦しい状態にあるコナツの気持ちが、俺にはスゴクよくわかったんだ。
コナツは俺の同志だった。おたがい、失敗ばかりの繰り返しで、シュート落とした奴だけが受けるリピート練習やバツゲーム的なつらいフットワーク練習を、何度も一緒にやっていたんだ。
部活で一番体力のない、俺とコナツが、さらに走らされるんだ。

ちょっと、脱線してしまったが、俺はコナツにシンパシーを感じていた。これは恋愛とかではなく、同じ泥をかじった同志としてのだ。
そして、話を戻すと、20年後のその飲み会で、コナツと当時のことを話して、とても楽しかった。

コナツはまだ独身だ。
彼女は演劇が好きで、今でも派遣の仕事をしながら劇団をしている。
正直言って、俺は二つの考えをそのときに抱いた。
一つは彼女は趣味で、好きで劇団をやっていてるんだなぁということ。趣味をもつってのは、いいもんだと思った。そして気楽そうだなとも。
そして一つは、彼女は何を目指しているんだろう、ってことなんだ。
正月も終わり、俺は彼女の劇団の名前でググッてみたんだ。
数件のヒットがあったが、オフィシャルページ的なタイトルをクリックしてみた。
味もそっけもない、テキストだけのそのHPに、講演日と場所が書いてあった。
そのあと、俺は胸を揺さぶられる衝撃を受けることになるのだが、次ぎのエントリーでそれを書こうと思う。
山ン婆1
顔がこそばゆい。何度も払いのけるのだが、目を開くほどでもなく。
かといって、深い眠りに何度もおちたのか、おちていないのか。それすらも定かではないが、とにかく眠りたかった。
また顔がこそばゆい。
おおかた、秋の蝿が露出した顔で暖をとっているのだろうとおもいながら、何度も払いのけるうちに、手がそのモノをつまむことに成功した。
それが何であるかもたしかめもせず、眠りを邪魔された怒りから、そのモノをつまみつぶした。
その感覚は明らかに蝿よりも固く、大きかったのだが、それが何かもたしかめるわけでもなく、俺はまた眠ろうとしたのだ。
眠りながらも、体が芯から冷え、間違いなくヒドイ風邪を引くだろうと眠りながら考えるのだが、とにかく眠りたかった。
顔がまたこそばゆい。
眠りながらも容易につまむことができたそれを、ようやく目を開けて確認した。ゲジだった。さらによく見ると、それは体節に足が二組あるヤスデのデカイやつだ。
俺から死臭が発せられていたのか。
手で払いのけることをしなければ、俺の目尻や目頭には蝿が目くそのような卵を産み落とし、鼻からヤスデが入り込み粘膜を囓っていたにちがいないのだ。
俺は生きていた。
それから、かじかんだ体のサキッポを体の中に沈めるようにし、記憶をたどった。ようやく右の膝頭が痛み出した。
座り込んだササ原。大きな石がコケの生えた地面からその一部を山のように出していて、子供のころテレビで見た孫悟空の誕生した山の中のようであった。なぜここにいるのだろう?
それは生まれてはじめて味わう記憶喪失であり、二日酔いの朝の感覚とは全く異なったものだった。それにしても寒い。なんとか山をおりたいのだが、かじかんだ体、痛みのヒドイ膝のせいで、立ちあがる気力がおきない。
少なくとも俺は環境調査の仕事で、この椴法華の山に入り、恵風という宿にとまっていることはわかる。俺が誰なのかも知っているし、業務の目的も明かだ。ただ、ここはどこなのか。どうしてこのようなありさまになっているのかが覚えていないのだ。
あたりは細いミズナラの林にササが密集していて、メガネをどこかに落としてしまった俺には、薄暗くなった林内を道もない斜面の下めがけて歩き出すことが怖かった。かといって、このままここで一夜を過ごすのもはばかれた。
時計を見るともう山用のデジタル時計は17:00をさしていて、当然外灯もない真っ暗な山になるのも時間の問題だ。胸には携帯電話があった。携帯電話で助けを求めようにも、ここがどこだか分からない上、完全に圏外であった。試しに会社にも、実家にも電話してみたのだが、当然かかるはずもない。
液晶のわずかな明かりを頼るしかなくなるまであと1時間もない。懐中電灯を持って山に入らなかった俺には、もはや携帯電話の液晶しか頼る明かりはないのだ。
胸からライターとタバコを取り出し、一服ついた。
何もする気が起きないとき、現実から逃れたいと思うとき、俺はいつも一服するのだ。かじかんだ指先、ガタガタ震えるアゴ、奥歯をカチカチならしながら吸ったタバコはなぜか旨かった。
俺はぼんやりと、数ミリ伸びた足の爪にびっしり土が間詰された黒いつま先をみつめ、暖をとって野宿するしかないと自分を納得させる時間を過ごした。
俺は長靴を履いているではないか?自分の足だと思っていたその汚れた足は自分のもげ落ちた片っぽの足なのか?
俺は股間からのびる自分の両足と、両足にはかれたなじみの長靴を認めることができてホッとした。
その足だと思ったものは、朽ち木や落ち葉でそう見えたのか。
俺はもう一度よく見えない目で、その足をたしかめた。
それはあたたかな、女の足だったのだ。
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