2010914(火)

エキノコックスの話 1/3

獣医×29

サル舎(青い風防ネットで囲まれた獣舎)
エキノコックスに感染したニホンザルが1頭います

その前に看板が2枚ありますが
向かって右側、枚数が多い方の看板の内容です
(看板作成後少し手直しした箇所もあります)

これは今月行われた野生動物医学会での発表と同じものです

中にはちょっと衝撃的な写真があります
(お気をつけ下さい)

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畜大の臨床獣医の方々にはX線、超音波、CTを撮っていただきました
畜大の基礎獣医の方々には病理を見ていただきました
道立衛生研究所外部リンクの方々にはELISA、WB検査をしていただきました

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北海道の人にはお馴染み(?)のエキノコックスの基本情報です
終宿主の腸の中で大人になり卵を産みます
卵は糞と共に排泄され
エゾヤチネズミ(中間宿主)に摂取され(口から入る)肝臓に寄生します
ネズミは弱っていき、キツネに食べられます
そして、寄生虫はキツネの腸の中で大人になり卵を産みます

おおまかにこんな感じです

野生ではキツネとネズミの間で生活環が回っています

終宿主としては身近な動物ではイヌが感染し卵を産みます
だから、みなさん検査を受けましょうね
山や公園で遊ばせている隙にネズミを食べているかもしれませんよ

ごくまれにネコにも寄生するようです

中間宿主としては家畜では馬、豚などに感染します
人間も感染します
サル類にも感染します

終宿主では薬で簡単に落とすことが出来ます
中間宿主では薬はほとんど効かず、人では外科的治療が必要となります

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平成9(1997)年10月4日午前
担当者よりサルが倒れているとの通報を受けました
ほぼ虫の息で午後には亡くなりました
夜、解剖をしていると
お腹の中に大きな腫瘤
中には白い液体が入っています
「化膿にしてはおかしいな?」
これを顕微鏡で見てみると
左下の写真
なんかいる!!!
多包虫症を確信し夜中に上司に電話
「どうしましょう?」
帯広畜産大学の家畜病理学教室に診断を依頼しました
右の2枚の写真
肝臓の中にエキノコックスを確認し確定診断されました

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対策を協議し飼育サル類全ての検査を実施すべく
ヒトのエキノコックス検査を行っている道立衛生研究所に相談
快く検査を引き受けていただくことになりました
飼育サル類全頭を採血し検査を実施
(ニホンザルのみでなく当時飼育していたサル類)
(ただし、チンパンジーをのぞく)

ニホンザル以外のサル類は全て陰性(感染していませんでした)
ニホンザル全57頭中9頭が明らかな陽性(感染)3頭が擬陽性(感染?)と言う結果となりました
陽性と判断された1頭については、結果を待たずに闘争が原因で死亡

11頭について超音波検査を実施し9頭に何らかの病変を確認しました

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今後の対応を協議し投薬治療を決定しました
対象個体をサル山から分けて飼育することにしました
(注意!サルからサルに感染することはありません)
確実に投薬するためには個別に飼育する必要があります
(さらに!めちゃくちゃ高い薬なので適切な投薬が必要になります)

しかし、

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次々と死んでいくことに・・・
左から園内番号(♂か♀、生年月日)死亡年月日(死亡原因)(死亡時年齢)
*13は生年月日ではなく入園年月日です
擬陽性(感染?)とされていたNo.56はどうやらエキノコックスでは無かったようです

つづく・・・

エキノコックスといえば、人間もかかる病気です。しかし、このサルから人間にかかることはありませんのでご安心下さい。

おびひろ動物園では対策を実施し現在まで新たな多包虫症の発生がありません

また、通常の衛生管理(手指洗浄など)を行えば感染することはほとんどありません

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